2022/08/06

「黒いビジネススーツ」を誂えるテーラーは2流か?

今回は、アシスタントくん執筆記事です!

前回の続きかと思いきや、全然違う話・・(笑)


唐突ですが、本来、黒いスーツ(正確には黒ジャケット)は「フォーマル」なものであって、「ビジネス」には相応しくなく、少なくとも英語圏では「ビジネス」と「フォーマル」は完全に棲み分けてます。

ちなみに、フォーマルかどうかはボタン/ポケット/ベントの仕様で判ります

スーツ量販店で「礼服兼用のビジネススーツ」が売られる日本では、両者の混同による違和感を例えるのは難しいですが、英語圏であれば「病人のお見舞いに礼服を着る」くらいの場違い感が漂うようです。

しかし、この様な文化背景が定着した英語圏でも、営業職じゃないから、とか、インパクト重視でとか、何らかの理由で、「敢えて黒いビジネススーツを誂えたい」とテーラーを訪ねる顧客は存在します。

適当なテーラーだったなら「お客の注文だから」と作ってしまうかもしれませんが、
大概のテーラーは「ご要望とあれば作れますが、黒と言えばやはりフォーマルで・・・」と、翻意を促すなり確認を取るでしょう。

さて、ここで問題です。

  • テーラーは客の要望どおりに「黒いビジネススーツ」を作るべきなのか?
  • 作るとしても、テーラーはどれくらい顧客と議論すべきか?

正解はありませんが、実はシシデザインで手掛ける案件でも類似した問題が生じています。

例えばホームページの制作に際して、「お客様が希望する〈ちょっと斬新な〉デザイン」をそのまま実装すると、ホームページを見る人からすると見づらい/使いずらいと想定される、という問題は典型でしょう。

「黒のビジネススーツ」の話と同様に、そこには

  • デザイナーにとって「要望にどおりに作ること」自体にはデメリットは無いのでは?
  • お客様の要望を修正する交渉は、手間のかかる事である上に収益に寄与しないのでは?
  • そもそも「それを見た人がどう受け止めるか」は第三者的に過ぎて説得材料として弱いのでは?

という論点があるでしょう。

結果として何がどう実装されるかは交渉の帰結によりますし、
それが正解かどうか、要望どおりに作った場合に比べてどれくらい有益か、
は結局のところは判らないのです。

さて、長々と書きましたが、技術的な問題を除けば、デザイナーにとっては「NO!」と言う事のメリットは(ほぼ)ありませんが、善意で「NO!」と言う事は多々あるという話です。

勿論これは作り手側に立つ文章なので、その提案を無碍にすることなく少なくとも検討することをお勧めしますが、敢えて奇を衒ってみるのもフルカスタマイズの醍醐味だとも思います。

いずれにしても、大概のお客様にとってはホームページ作成は1大プロジェクトなので、悔いの無い選択を、としか言いようがありません。

実際問題、私もテーラーが大反対する「クレイジーな仕様」のスーツを作ったことがありますし、それに後悔は全く無いどころか、作らなかったら大後悔したと今でも思ってることを申し添えます。

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